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最高裁判所第三小法廷 昭和33年(オ)352号 判決 1960年10月04日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人馬淵正己の上告理由第一点について。

不動産の従としてこれに附合した物がその不動産の構成部分となつた場合又は附合物が社会通念上その不動産の一部分と認められる状態となつたときは民法二四二条により不動産の所有者は附合物の所有権を取得するのであつて、民法二〇八条所定の区分所有権はその部分が独立の建物と同一の経済上の効力を全うすることを得る場合に限つて成立し、その部分が他の部分と併合するのでなければ建物としての効力を生ずることができない場合にはこれを認めることができないものであり、その部分が構成部分となつた場合にはもちろん附合の効力を生ずるとともに、もはやその部分は独立の建物と同一の経済上の効力を有し得ないものである。そしてその部分が独立の建物と同一の経済上の効力を有するか否かの判断に当つては社会通念上の経済的利用の独立性と事実上の分割使用の可能性とを混同すべきではない。

本件についてこれを見るに、原判決が第一審判決を引用して確定した上告人(控訴人)松元一次郎所有にかかる判示(一)の既存家屋(第一審判決添付目録(一)の家屋)と同(二)の増設建物との物的関係によれば(二)の増設建物は(一)の家屋に従として附加された結果後者の構成部分をなし両者が合して一個の建物をなしており、(二)の増設建物は(一)の建物と併合するのでなければ、それだけでは独立の建物と同一の経済上の効力を全うすることを得ないもの、従つて区分所有権の客体となることのできないものといわなければならない。されば原審が(二)の増設部分は(一)の家屋の所有者であつた上告人一次郎の所有に帰したものとして、社会通念上経済的利用の独立性のないことを理由として区分所有権を否定した判断は正当であつて所論は独自の見解に過ぎない。この場合民法三七〇条により抵当権の効力が右増設部分に及ぶことは当然である。論旨は理由がない。

同第二点について。

所論は原審が本件競売手続における(二)の建物部分の表示が欠けているのを無視して競売手続を適法であるとしたのは違法であるというが、この点に関する原審の判断は相当であつて、所論は独自の見解にすぎず採用することができない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 高橋 潔 裁判官 石坂修一)

《当事者》

上告人 松元一次郎

上告人 松元ハマエ

右両名訴訟代理人弁護士 馬淵正己

被上告人 野村新太郎

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